グローバルレポートGLOBAL REPORT
ブラジル遠くて近い国
150万人をこえる日系人コミュニティー、昔の日本にタイムスリップしたかのようなサンパウロ・リベルダーデ地区(日本人街)の街並み、イベントがある度に披露される壮大な和太鼓の演奏、夏の盆踊り、これらは世界最大の日系人コミュニティーがあるブラジルが持つ一面であり、ブラジルが日本にとって「遠くて近い国」と呼ばれる所以です。ブラジルといえば、サッカーやリオのカーニバル、キリスト像が見下ろす美しいコパカバーナビーチやアマゾンなどを思い浮かべる方が多いかと思いますが、私たちが住む日本にとっても繋がりの深い特別な国です。
1908年に日本からの第一回移民781名が「笠戸丸」に乗ってブラジル・サントス港に到着して以来、私たちの先祖に当たる日本人は農業分野でも当時「着いたらジャングルしかなかった」といわれるような劣悪な環境から、言葉ではとても言い表せない苦労を経て、現地で大きな貢献をしてきました。ブラジルには豊富な水と土地、作物にとって良好な気候条件が揃っており、スーパーマーケットを訪れれば、あらゆる種類の野菜や果物が所狭しと並んでいます。これら野菜や果物の中でも、大根や白菜、ニラや長芋などをブラジルに導入したのは日本人と言われています。ブラジルは先住民とアフリカからの旧奴隷、ポルトガル、イタリア、ドイツ、日本といった移民とが混ざったいわば「多民族国家」です。その中でも日本人は、その真面目で誠実な働きぶりからポルトガル語で「Japones Garantido(日本人なら間違いない)」と格言になるくらい高い信頼を獲得しており、現地を訪れる度に、外から来た私たちでもこの評価を実感することができます。こうした経験をする度に、ここに至るまで長い時間をかけて地道に信頼を積み上げてきた日本人移民の方々に対して敬意を感じずにはいられません。2018年には移民110周年を迎え、現地に長く貢献してきた日系企業が招待されるイベントがあり、住友商事出資先である当社現地パートナーのIHARABRAS社が記念式典に招待されました。そこには皇族の眞子様もご出席されて式典に花を添えて下さいました。
ここ数十年でブラジルの農業は目覚ましい発展を遂げ、現在では大豆、とうもろこし、コーヒー、さとうきび、オレンジなどが生産量で世界のトップ3に入るなど、世界最大の農業国の一つになっています。
実際にこれら農作物の生産圃場を訪問すると、その規格外の大きさに圧倒されます。
ブラジルは国土でも日本の23倍ありますが、農地面積でも日本の1農家あたりの平均農地面積は1ha程と言われている一方、ブラジルでは1農家で5000haを超える農地を持っている農家も珍しくなく、その規模は正に規格外です。
住商アグロインターナショナルは、ブラジルを含む世界各国に日本発の農業資材を輸出して届ける業務を行っています。年間を通して、現地に出張して私たちが輸出した商品の使用現場を視察したり、逆に現地の顧客を日本に招待して製造現場訪問や観光案内をしたりすることもあります。こうした機会は「私たちの商品が実際に現場でも使われている」ということを肌身で実感する瞬間でもあります。ブラジル人は、喜怒哀楽の感情表現がストレートで、人の喜びや哀しみも自分のことのように感じられる良い意味でとても人間臭い人種だと感じます。ブラジル人と話していると、家族や友人を大切にすることなど、人間としてごく当たり前のことに今更ながら「自分はできているだろうか?」と改めて気づかされるような気がします。人種や歴史の観点からも「皆が違うことが当たり前」の多様な文化であるため、他人に対しても寛容で大らかな性格に結びついているのかも知れません。そんな懐の深い国ブラジルに対して、今後も日本発の技術・商品を届けていきたいと思います。